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症例のご紹介28

症例のご紹介28

60代 女性

詳細

こちらの患者さんは、市が実施している歯科健診をきっかけに、当院を受診されました。健診ではむし歯や歯周病のチェックだけでなく、「せっかく来たので、お口全体も詳しく診てほしい」とのご希望があり、精密な検査を行いました。お口の中をしっかりと診査したところ、左下の奥歯(6番)の歯の根元に異常が見つかりました。レントゲンや視診の結果、その歯には「歯根破折(しこんはせつ)」と呼ばれる状態が確認されました。

これは、歯の根っこにヒビが入ってしまっている状態で、自然に治ることはなく、多くの場合は抜歯が必要になります。患者さんともご相談のうえ、やむを得ず抜歯を行うことになりました。歯を1本失った場合、そのまま放置してしまうと、周囲の歯が少しずつ傾いてきたり、噛み合わせがずれてしまったりと、さまざまな問題が起こりやすくなります。そのため、何らかの方法で失った歯を補う治療が必要になります。

一般的に、歯を補う方法には以下の3つがあります。

1. ブリッジ:両隣の歯を削って橋のように人工の歯をかける方法。
2. 入れ歯(義歯):取り外しができる人工の歯を装着する方法。
3. インプラント:歯の根の代わりとなる人工の金属(チタン)を顎の骨に埋め込む手術をし、その上に人工の歯を装着する方法。

この中でインプラントは、外科的な手術が必要で、治療期間も長く、費用も高額になることが多いため、患者さんにとっては負担が大きい方法です。
一方、ブリッジについては、今回の場合、隣の歯の「歯冠高径(しかんこうけい)」、つまり歯の高さが低く、かつ支台となる歯の向きも平行ではなかったため、無理にブリッジを装着すると安定性に欠けると判断しました。

そのため、患者さんと相談を重ねた結果、見た目にも目立ちにくく、歯への負担も少ない「部分入れ歯(パーシャルデンチャー)」を選択することとなりました。
しかしながら、実際の製作には工夫が必要でした。今回のケースでは、入れ歯を支えるために金属のワイヤー(クラスプ)をかける歯が、通常よりも内側(舌側)に傾いて生えていたため、一般的なワイヤーでは装着や取り外しに苦労する可能性がありました。

そこで、クラスプの素材には、適度な柔軟性と耐久性を持つ「白金加金(はっきんかきん)」という金属を使用しました。この素材は、しなやかに曲がる性質があるため、着脱がスムーズで、かつしっかりフィットする入れ歯を作ることができます。また、見た目の点から金属のワイヤーが表に見えない「ノンクラスプ義歯」も検討しましたが、今回は歯の傾きや強度の面から適応が難しく、より安定性の高い通常のクラスプ義歯を選択しました。

当院では、患者さん一人ひとりのご希望を丁寧にお聞きしながら、歯や噛み合わせの状態、生活スタイルなどを考慮し、最も適した治療法をご提案しています。特に入れ歯治療は、単に「歯を補う」というだけでなく、「違和感が少なく、しっかり噛めること」や「見た目の自然さ」も重要なポイントです。そのため、治療に入る前にじっくり時間をかけてご相談することを大切にしています。はじめての方でも安心してお話しいただけるよう、分かりやすい説明と丁寧な対応を心がけております。
実際に入れ歯を使用されている患者さんからは、以下のような感想をいただいています。

「初めての入れ歯治療で、とても不安でした。最初は『ちゃんと使えるのかな?』と心配していましたが、実際に装着してみると、違和感がほとんどなく、つけているのを忘れるくらい自然な感覚です。今のところ、まだ食後に外して洗う習慣がうまくできていませんが、しっかり使えていて、とても感謝しています。」

入れ歯に関するお悩みやご質問がある方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

経過の写真

治療個所

上顎 精密鋳造義歯
コバルト+白金加金ワイヤー 左下6

治療期間 1ヶ月(3回の通院)
治療費用 204,000円(税込)
副作用とリスク 金属を使用していますので、稀に金属アレルギーのリスクがあります。